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2025年 コアジサシ営巣状況調査報告

  • 5 日前
  • 読了時間: 3分

今年玉島のコアジサシは例年になく早い飛来で、4/6にたった1羽。

午後になると吹き荒れる強風で1羽だけ群れをはぐれたのか、

ハマシギの群れの中に降りようとして、ハマシギがそれをいやがるように飛び立つ、というのを繰り返していました。

数日でこの個体はいなくなり、それからしばらくコアジサシは姿がみえなくなりました。

例年やってくる時には複数羽で、鳴きかわしながらにぎやかにやってくるコアジサシ。

今年は静かで淋しい初認でした。


ある程度の数になり始めたのは4/14頃から。

0~50羽と増減しつつ玉島沖で採餌したり飛び回ったりしていて、なかなか営巣地に入っていかず。

日中は暑く、朝晩は肌寒い日もあり、もう少し季節が進んでからでないと数も増えず、繁殖の機運も高まらないのだろうとみていました。


5/13の最初の調査時には、営巣地に抱卵体勢の個体は1羽のみ。

周辺をあわせても40羽程度の確認となり、次の調査に期待をしていました。

ただこの時も全体的に数が少ない状況が続いていました。


その次の調査日、5/20には抱卵体勢の個体は47羽でしたが、

周辺を飛び回っているのは70羽ほど。


抱卵体勢の数が増えたことで安心しましたが、

5/27の調査時には抱卵体勢の数は9羽にまで激減。

次回調査は6/5を予定していましたが、その前日には一斉にいなくなっており、

6/5には周辺を含めコアジサシの姿は全く見られませんでした。


たびたび天敵の捕食に遭い、営巣地を離れて移動したものと思われます。

6/12現在、周辺にコアジサシの姿は全くない状況です。

天敵は周辺で繁殖していたハシブトガラスのほか、

夜間に騒いだという情報もあり、イタチやネコなどの存在も考えられます。

また、一時は高梁川河口をさかのぼって潮止堰あたりまで広がって、

数が増えたかに思われたのですが、気候変動が引き起こすフェノロジカルミスマッチ*が関わっているという見方もあります。


昨年の9月、鳥学会2024の自由集会において行われた「コアジサシ国勢調査」で、

2024年夏、日本にやってきたコアジサシは5,500羽と推定されました。

2014年の環境省の調査では5,000~10,000つがい(「コアジサシ繁殖地の保全・配慮指針」(平成26年3月))とされていますので、その減少の実態には危機的状況だと実感しました。


いよいよ玉島でもコアジサシの確認が難しくなる時が近づいているのかも知れません。

過去に数千羽飛来していたのにも関わらず、現在デコイ設置や音声誘引しても全く飛来しない地域もあります。

他県では人目の届かない工事エリアなどで繁殖している現状もあるようですが、

そのような場所がいつまで存在するでしょう。

今後も企業や全国のNGO、NPO、行政と連携し、少しでもよい環境を残せるように働きかけていきます。


※なお今年は5/24(土)、干潟の生きもの観察会が中止となり、雨天でしたが、備前市から牛窓あたりまでを調査しています。また別日に笠岡沖も調査していますがコアジサシの姿や声などは確認できていません。


*フェノロジカルミスマッチ)

気候変動などによって生物の季節的な活動のタイミングがずれ、繁殖や採食などの生態的相互作用に影響が出る現象。Visser & Both (2005) などの研究で広く論じられている。

参考:Visser, M. E., & Both, C. (2005). Shifts in phenology due to global climate change.



5月20日のコアジサシの様子
5月20日のコアジサシの様子


 
 
 

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